ヘンゼルトのピアノ協奏曲2012/03/18

 大阪交響楽団、於シンフォニホール。指揮は寺岡清高、ピアノ長尾洋史。
 ポンティ、アムランの録音もある作品だが相当に難しい作品。やや紋切り型の部分もあるがロマン派のピアノ協奏曲の佳曲だろう。レコーディングが入っていたためやや慎重な演奏だったおそらくこれから先ヘンゼルトの協奏曲を聴く機会は滅多にないだろうから貴重な演奏会であった。
 協奏曲形式はあまり好きではないのだがライヴで聴くと華があって魅力的ではある。シュトラウスの「ブルレスク」とかドビュッシーの「幻想曲」など演奏される機会が少なく残念だ。

アルス・スブティリオル2012/03/15

 最近ヨーロッパの中世音楽を良く聴いているが中でもアルス・スブティリオルの時代の音楽が興味深い。
 中世音楽といえばギヨーム・ド・マショーやジョスカン・デ・プレ、ギヨーム・デュファイ等がまず思い浮かぶが一口に「中世音楽」と言っても時代はかなり違い作風も相当違う。普通我々がバッハとワーグナーを同じように思わないのと同様、マショー(14世紀)とクレマン・ジャヌカン(15-16世紀)では相当に違う。バロック以前の中世音楽はどれも一緒に聞えるいうのは聴き慣れていないせいであろう。少なくともデュファイ以後の作曲家は個性の表出が顕著に表れ始める。とはいっても私はまだ曲を聴いてこの作曲家だ、断定するほどではないので耳が鈍感になっているのであると思う。

 アルス・スブティリオルは「より繊細な技法」という意で時代はマショーの後続の世代である。すでにマショーにより複雑なリズム書法による作品が書かれていたが、この世代になると更にリズムは複雑になってゆく。「ヨーロッパ音楽のリズムがこれほどまで複雑になったことは、現代作品をのぞいて、かつてありえなかった」と皆川達夫氏が書いているように現代の記譜法に直された楽譜は正に「真っ黒」という相貌である。百年戦争、ペストの流行と不安定な時期でありでマニエリスム、デカダンスが色濃い。

 中世の音楽はどこかバロック以降の複雑な作曲技法とは違い素朴な味わい、癒しの音楽、というようなイメージがあるがそういう一面もない訳ではないが遥かに技巧的であり理知的な音楽である。

トリオの練習2012/01/23

 トリオの初顔合わせ。曲はメンデルゾーンのピアノトリオ2番。素晴らしい曲だ。メンデルゾーンはピアノ曲も多く佳曲もあるがやはり弦楽器の旋律線の美しさが最大の魅力であろう。ピアノパートは結構難しい。

グレッグ・アンダーソン「美しき青きドナウ」2012/01/12

 グレッグ・アンダーソンはアメリカのピアニストであり自身のピアノデュオの為の編曲でも知られる。日本では伊賀あゆみと山口雅敏両氏によって演奏紹介されている。私も両氏の実演を聴いたことがあるがまず、華やかな編曲であることに加え両パートの腕の交差や演出など厭きることがない作品となっている。
 楽譜を見ながら聴くと実に考えられた編曲であることがわかる。アンダーソンの代表曲とも言える「美しき青きドナウ」では途中「ラブストーリー」を想わせる演出も施されてあり是非男女のピアノデュオで聴きたい作品である。腕の交差もローゼンブラットの「コンチェルティーノ」程の大技では無いが中々難しく書かれてある。演奏に関してはローゼンブラットの方が簡単だろうか。
 ラフマニノフの「ヴォカリーズ」も佳作で対位法的な書法では無理に両パートに旋律を振り分けることをせず腕の交差を厭わないのは演奏上、音楽的にも無理がない。

http://www.youtube.com/watch?v=iTKyoovCdXw&feature=related

ジェフリー・チャペルのジャズソナタ2012/01/06

 ジェフリー・チャペルによる「ジャズソナタ」は自演盤がCentaurから出ている。複雑という印象は受けないもののそれなりに楽しい作品に纏まっている。他にも「メランコリー・ムーン」「無言のポップソング」などはアンコールにぴったりの小品であろう。「無言のポップソング(Pop Songs Without Words)」は言うまでもなくメンデルスゾーンの「無言歌」のパロディ(メロディーそのものをパロディにしている訳ではない)。
 楽譜を付き合わせて聴いているとそれほど難しいとは思われないのだけれども、実際に演奏すると記譜上のリズムは聴くほどに単純ではない。ジャズ系クラシック作品を演奏する際リズムは特に細心の注意を払うべきでメトロノームで緻密に練習する必要があるだろう。