内田百閒2012/05/25

 倉橋由美子は内田百閒の文章を「食べだすとやめられない駄菓子」と評したが確かに百閒の文章はどんどん読みたくなる。鈴木清順の「ツィゴイネルワイゼン」の下敷きとなった「サラサーテの盤」に代表される幻想譚、怪異譚が有名だが長編「贋作吾輩は猫である」のとぼけた雰囲気も楽しい。第七の冒頭「出田羅迷君」と先生の会話。

 出田羅迷君が長い顔をして来ている。
 「お忙しいですか」
 「なぜ」
 「いえ、お忙しいですか」
 「それ程でもない」
 「そうですか。しかしお忙しいのでしょう」
 「忙しくない」
 「いや、お忙しいのは結構です」
 「何を云ってるんだ」

 いかにも百閒らしい会話だが、こういう文章は簡単そうに見えても常人にはなかなか書けない。百閒の師である漱石も日本語の達人であったが明治期の文人は文語体、漢文の素養がものを云うのだろう。三島由紀夫も鴎外の文章を漢文と比較していた。

ケクラン2012/05/26

 本日勤め先の楽器店の発表会があり講師演奏としてケクランの「ジーン・ハーロウの墓碑」を演奏。サックスとフルートとピアノのためのこの小品は早世したハリウッド女優ジーン・ハーロウのために書かれている。いかにもケクランらしい9度の和音のアルペジオの上にフルートとサックスの流れるようなメロディーが重なっていく。僅か4分ほどの小品であるが複雑な響きの作品。
 ケクランにはハリウッドスターをモチーフにした「スター交響曲」やリリアン・ハーヴェイへの「リリアンのアルバム」、「・ディジー・ハミルトンの肖像」、「ジンジャー・ロジャースへの5つの踊り」といった映画俳優にちなんだ曲がある。ほとんど演奏される機会がないのが残念だ。

ロジャー・ノリントン N響2012/05/28

 NHK「ららら♪クラシック 」。ベートーヴェン「英雄」1、3、4楽章。
 4月14日にFMで放送されたN響の生放送で聴いて特にティンパニの切れのある音に聴き惚れたがこの日の「ららら♪クラシック」では打楽器奏者の久保昌一氏をゲストにピリオド楽器をスタジオに用意。マレットも木製を使用したとのことであった。
 FMではもちろん全楽章放送したが2楽章が面白かった。6月3日にはBSで前半も含め放送があるようなので見てみよう。

 ノリントンの演奏はその「ピュアトーン」からして清潔で明快。ベートーヴェンに限らず口先の「精神性」を軽く乗り越える演奏で私の好きな指揮者である。ピュアトーンとピアノに準えて解説していたがピアニストでもこういった方向性の音作りの人は少ないのではなかろうか。