アルス・スブティリオル2012/03/15

 最近ヨーロッパの中世音楽を良く聴いているが中でもアルス・スブティリオルの時代の音楽が興味深い。
 中世音楽といえばギヨーム・ド・マショーやジョスカン・デ・プレ、ギヨーム・デュファイ等がまず思い浮かぶが一口に「中世音楽」と言っても時代はかなり違い作風も相当違う。普通我々がバッハとワーグナーを同じように思わないのと同様、マショー(14世紀)とクレマン・ジャヌカン(15-16世紀)では相当に違う。バロック以前の中世音楽はどれも一緒に聞えるいうのは聴き慣れていないせいであろう。少なくともデュファイ以後の作曲家は個性の表出が顕著に表れ始める。とはいっても私はまだ曲を聴いてこの作曲家だ、断定するほどではないので耳が鈍感になっているのであると思う。

 アルス・スブティリオルは「より繊細な技法」という意で時代はマショーの後続の世代である。すでにマショーにより複雑なリズム書法による作品が書かれていたが、この世代になると更にリズムは複雑になってゆく。「ヨーロッパ音楽のリズムがこれほどまで複雑になったことは、現代作品をのぞいて、かつてありえなかった」と皆川達夫氏が書いているように現代の記譜法に直された楽譜は正に「真っ黒」という相貌である。百年戦争、ペストの流行と不安定な時期でありでマニエリスム、デカダンスが色濃い。

 中世の音楽はどこかバロック以降の複雑な作曲技法とは違い素朴な味わい、癒しの音楽、というようなイメージがあるがそういう一面もない訳ではないが遥かに技巧的であり理知的な音楽である。

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